『キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇』を読んだ。いつも時代のすぐそばにある文章が魅力的だと思う。
こんにちは。Jです。
先日読んだ本の感想文書きます。
今回読んだのは、石田衣良さんの小説『キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇』。
言わずと知れたIWGP(=池袋ウエストゲートパーク)シリーズ。
今回はその番外編を読んでみました。
IWGPシリーズは、私にとって思い出の作品です。
それは遡ること10年以上前。(ひええ…)
中学生になったばかりの頃、まだ足腰が元気だった祖母と本屋に行った時のこと。
突然の「好きな本を一冊買ってあげる」という言葉。
本は家にあるものを読むか、図書館で借りていた私はなんだかとても嬉しくて、本屋中をグルグルと彷徨った記憶があります。
忘れもしない、アピタの中のあの本屋さん。w
迷いに迷って、小説コーナーで手に取った本が、『池袋ウエストゲートパーク』でした。しかもわざわざ単行本の。子どもの頃のわたしには、単行本は大きな買い物。
帯の言葉に惹かれたのと、当時の私にとって、あの装丁がとてもかっこよく見えた。
(これは文庫本の方ね)
一冊読み終えて、中学生には少~しだけ大人でダークな世界にびっくりしながらも、主人公マコトの語り口に惹かれ、2巻以降はお小遣いを貯めては買い、読み。
そんなこんなで程々に大人になり、私が大学生以降に出た新刊たちは未読という状態で最近まで過ごしておりました。
そこで久しぶりに目にした、IWGPシリーズ。
しかもキングがメインの番外編ときたら、読みますよね。
読んだことある方は共感いただけると思うのですが、キングって超かっこいいのです。マコトとの関係性も多くは語られてこなかったけれど、特別な関係であることは明らかで。その過去が見られるなんて。
IWGPファンには胸熱の一冊。
ただ、読んでみると、あの氷の王様の過去です。そんな明るくも軽くもないお話に決まってます。
彼の過去の全て、そしてマコトとの家族ぐるみの付き合い。
なぜ彼が氷のように冷たい池袋の王様になったのか。そして、何を目的にGボーイズを束ねているのか。
大人びているとはいえ、高校時代の不安定さを孕みながら進んでいく独特の空気が物語にはあります。
そしてわたしがIWGPシリーズに惹かれる理由。
いつだってマコトの文章は、その時代を抱えて語られるということ。
おれは風俗街の路地の幅に切りとられた細い夏空を見あげた。まぶしい入道雲のスライス。ブラック企業は若いガキを低賃金でつかいつぶす。自分の遺伝子を未来に残す希望さえ捨てるくらいの低賃金で。
こんな文章に、その時自分の感じている、社会に関するモヤモヤが反映されていることを読み取り、マコトと共に生きている気持ちになって、また物語に引き込まれていくのです。
いつだってマコトはわたしたちのそばに、わたしたちの方にいてくれる。そんな不思議な安心感。
そして、時代の空気を具現化する若者たちの物語を通して語られる、社会への問題提起を受け取るツール。
わたしにとってのIWGPは、そんな物語です。
また1巻から読み直そうと思った物語でした。
IWGP未読の方は、この巻から読んで、その後に本編を1巻から読むのも楽しいのではと思います。
(わたしにはもうそれができないのが悲しい!)
久しぶりに読んだ小説でした。楽しかった。